2014年10月27日

水俣病 食中毒調査義務付け訴訟 第二回 口頭弁論 #minamata

2014年10月24日(金)、東京地裁で行われた水俣病食中毒調査義務付け訴訟の傍聴に行ってきました。

裁判所合同庁舎(東京・霞が関).jpg

水俣病食中毒調査義務付け訴訟の法廷が開かれたのは今回が二回目で、この日は、原告である佐藤英樹さんの口頭弁論が行われました。佐藤英樹さんは水俣病被害者互助会の会長です。

佐藤さんが裁判官に述べた内容の抜粋が
以下の通りです。

まず、佐藤さんご自身について

  • 水俣病患者が多く住む、水俣市袋生まれ。

  • 海岸から20mのところで育った。


家族と水俣病について

  • 父親と祖父は漁師。

  • 祖母と両親は水俣病認定患者。

  • 4人の姉弟全員が、水俣病の医療手帳保持者、あるいは被害者手帳保持者。


佐藤さんと水俣病について

  • 佐藤さんご自身は現在、3回目の認定申請中(二回棄却されている)。三回目の申請は9年前。つまり9年間待たされている最中であり、必要な検査もまだ終わっていない。


佐藤さんを棄却した判断基準(52年判断条件)への不信について

  • 佐藤さんと同じように、認定申請を二回棄却された下田良雄さんという人は、公害健康被害補償不服審査会に申し立てをして、2013年10月に水俣病と認められた。
    (下田さんを水俣病患者だと認めてこなかった審査を、不服審査会が見直したところ、審査の誤りを認め、下田さんは水俣病患者だと認められたということ。)

  • (佐藤さん、下田さんを棄却してきた基準である)52年判断条件は、何を根拠にして決定されたのか。現地の患者データや医学論文があるのか。根拠なく基準が決められているのが事実ではないか。もし根拠となるデータがあるのなら、(被告=国に)具体的な表題を聞いてほしい。

  • このような状態にあることから、食品衛生法に決められている汚染地域の調査をしてほしいと訴訟をした。



水俣病は魚介類を食べたことで発症した病気であることから食中毒事件であり、であれば、食品衛生法に基づいた現地調査が行われるべきだという主張です。

ところが、これまで国が打ち出してきた水俣病に関する施策は、被害地の状態を調査せずに考案された策ばかりです。ですので、佐藤さんは、現地調査をしてほしいと訴えているのです。

口頭弁論の後、山口弁護士が、この間に集めた署名を裁判官に提出し、次回の日程を決めて、この日の法廷は15分ほどで終わりました。

ここから先は、同日に行われた報告集会での話を含む報告になります。

争点
佐藤さんが訴えた、食品衛生法に基づく食中毒事件としての水俣病の調査(不知火海沿岸の住民県調査)を求める主張が、この裁判の争点です。

この主張に対して、被告(国、熊本県)は、「処分性がない」「行政訴訟の要件を満たしていない」と反論しています。

「処分性」という表現は、あまり馴染みのない表現ですが、行政(国や県)が行ったことについて、裁判で争うには、行政がしたことによって、「直接国民の権利義務が失われたり、狭まったりすること(権利の変動が明確にあること)」だけが、訴訟の対象になるのだとか。

この「処分性」の有無については、水俣病事件に関する別の訴訟でも問題になり、訴訟自体が却下されたケースがあります。

環境省が今年3月にだした「新通知」についての訴訟です。訴訟内容は、この「新通知」に従った認定審査を熊本県にしないように求めると同時に、環境省に「新通知」を取り消すよう求めるものでしたが、「処分性がない」という理由で訴訟自体が却下されています。
環境省から熊本県にあてた新通知は、国民には関係はなく、官庁間の連絡事項でしかない---- というのが却下の理由でした。

参考:
新通知差止め訴訟と仮の差止め請求の経過一覧表

私からすれば、食中毒調査も、新通知も、国民への影響があるとしか思えません。

「新通知」は、認定申請者が水俣病かどうか判断するときの基準について書かれたものですから、患者かどうかを判断する根拠になるわけで、申請する人にに影響を及ぼします。

食品衛生法に基づく調査をしていないということは、不知火海沿岸地域に「行政に記録されていない」被害者がいるか、いないかもわからないということ。実態がわからないままに組立られた水俣病の認定基準や新通知といったものを、患者認定、あるいは患者切り捨ての基準にしているわけで、この基準にそって、水俣病かどうか判断される佐藤英樹さんは、まぎれもなく不利益をこうむっていると思われます。

ところで、この裁判において被告(国と熊本県)は、水俣病が食中毒事件であるかどうか、意見を述べていないと山口弁護士はいいます。

「水俣病は魚たべて症状がでるわけで、食中毒である。ところが、国の指定代理人は、水俣病は中毒かどうか明らかでないといっている」(山口弁護士)

こうした立場をとる国・県は、水俣病事件はそもそも食品衛生法とは関係がないと、いわんばかりなのだそうです。

国側が裁判所に提出した書面(第一書面)によると、食品衛生法にもとづく調査報告要請というのは、直接的に個別の国民との関係において食中毒発生実態や正しい病像を明らかにするものではなく、また食中毒患者等を食中毒患者として認定するものではないと解釈していて、
つまりこれは、「食品衛生法が国民を守ってくれるものだと思っていたら、国いわく、この法律は直接国民とは関係ないといっているに等しい」とのこと。 

最高の法廷進行
それでも報告集会で山口弁護士は、この日の法廷でのやりとりについて、「最高の法廷進行」だったと評価しました。

国を相手にした行政訴訟で、ここまで上手くいくことはあまりないとのこと。
一般的な事件の裁判も含めて、この日の法廷の展開は「奇跡的」な出来事があったといいます。

第一の奇跡
水俣から、被害者である佐藤英樹さんが来て、陳述したこと。
佐藤さんが直面している「不条理」を、当事者から聞けたことが一つ目の「奇跡」。
裁判官は佐藤さんの話を途中で止めることがなかったこともよかったと。

ちなみにこの日の法廷は、原告側の席に二人(山口弁護士と佐藤さん)、被告側には、14人もの指定代理人や検察官、訴訟検事が座っていました。私たちの税金によって、仕事をしている人たちが、佐藤さんの主張に反論を唱えるために仕事をしているのは皮肉なことです。
 
第二の奇跡
この訴訟が継続する(軌道に乗った)という手ごたえがあったこと。
処分性がないという理由で、審議が行われないこともなく、裁判官が双方の言い分を聞くような姿勢を見せていること。次回(2015年1月16日)で閉廷するとも言われていない。

第三の奇跡
水俣病の調査をするよう求める1468人分の署名が提出できたこと。

「みなさんの汗と情熱による署名簿が、私のコメントともに提出できたことは、裁判ではあまりないことです」(山口弁護士)

住民訴訟の場合は、住民投票の有無といったことが、判決を左右する要件になりますが、水俣病の調査義務付け裁判における署名の意味というのは、「これだけ多くの人が、食中毒調査をしてくれ」と要望していることを可視化したもの。裁判官が署名を受け取るにしても「雑記録」として受け取ることもできたにも関わらず、裁判資料として受け取ってもらえた点が、注目すべき点なのだとか。

「署名簿が正式な証拠になったことは奇跡的なこと」(山口弁護士)

次回法廷が行われるのは、来年1月16日です。

水俣病食中毒調査義務付け訴訟の経過一覧表

詳しくはこちらのサイトで。
食中毒調査の義務付け判決を求める署名用紙(PDF)もこちらのサイトにあります。
食品衛生法に基づく水俣病食中毒調査の義務付け訴訟


posted by みの at 11:54 | TrackBack(0) | 水俣 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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