2013年11月23日

水俣病-3- 騙されてはいけない環境省の「最高裁判決は受け止める」発言 #minamata

(前回からの続き)

環境省・特殊疾病対策室室長の小林氏によれば、最高裁判決に認定基準は拘束されるが、不服審査会の裁決には拘束されないという。しかし、筆者は、審査会の裁決は、環境省を拘束するもの(行政不服審査法第四十三条)であると考える。
また、審査会の裁決は最高裁判決に従ったものであるから、最高裁判決が示す認定基準と、不服審査会が今回用いた認定基準には違いはなと理解している。
 
最高裁判決「単一症状でも水俣病と認定する余地はある」
    ↓
不服審査会、上記判決内容に従い、下田さんを認定相当に。
   ↓
環境省「最高裁判決には拘束されるが、審査会裁決には拘束されない」


最高裁判決に従えば、結果として、環境省は審査会裁決に従ったことになるのだが・・・

代理人:今回の(審査会の)裁決は、最高裁判決の趣旨を再確認、徹底したものだという考えはもっているのか。あるいは、今回の裁決は、全く違う趣旨だと理解しているのか。
小林 :合議体組織である不服審査会として判断されたものとして考えている。
代理人:(小林氏が質問とはズレた回答をしているので、再度質問)裁決は、最高裁判決の趣旨を徹底、再確認し、さらに具体化したものだと理解しているが、それは違うか。
小林 :独立した合議体組織の判断については、環境省の事務方としてはコメントを控えたい。


このやり取りからわかるように、環境省は何がなんでも、不服審査会の裁決内容は認めたくないようだ。
よって、最高裁判決と、審査会裁決の主張が同じであることも認めたくないため、「コメントは控えたい」と言わざるを得ないのだろう。

次に、環境省がいう「最高裁判決には拘束される」の真意を見ていく。

最高裁判決が認定基準(52年判断条件)を否定していることについて小林氏は、
 「52年判断条件が否定されているという見解ではないという認識を持っている」と発言している。
したがって、小林氏が何度も口にした「(環境省としては)最高裁判決をふまえた通知をだして、より丁寧に慎重に(やっていく)」という、一見、判決を素直に受け入れたように聞こえる発言も、“最高裁判決によって基準が否定された”という認識がないことを踏まえての発言と考えると、全く意味のない回答に等しい。

であれば、環境省が取り組んでいる「総合的検討」は、水俣病行政の改善にはつながらない。「総合的検討」は、被害者を不利な状況に追い込む時間かせぎと、最高裁判決をうけて環境省は対策をとったというアリバイづくりにしかならないだろう。

そのような逃げ腰の環境省に対して、さまざまな団体が基準を見直すよう訴えている。

孤立する環境省〜環境省を包囲する動き〜
最高裁判決(4月16日)を支援する声明等。

日本弁護士連合会会長談話(4月16日)
国は、今回の最高裁判決を踏まえ、すべての水俣病患者を救済するために、感覚障害等一症状だけであっても、曝露歴がある限りは、水俣病患者として認定するよう、「昭和52年判断条件」を速やかに見直すべきである。


大阪弁護士連盟会長談話(4月16日)
国は、今回の最高裁判所判決を踏まえ、全ての水俣病患者を救済するために、感覚障害等一症状だけであっても、曝露歴がある限りは、水俣病患者として認定するよう、「昭和52年判断条件」を速やかに見直すべきである。


熊本県、最高裁判決をうけて、溝口チエさん(故人)を認定。(4月19日)

九州弁護士会連絡会 水俣病の認定義務付け訴訟最高裁判所判決に関する理事長声明(5月1日)
今回の最高裁判決を踏まえ、国は、すべての水俣病患者を救済するために、「昭和52年判断条件」を速やかに見直し、感覚障害などの一症状だけであっても、汚染地区の魚介類の摂取などメチル水銀への曝露歴がある限りは、水俣病患者として認定すべきである。


最高裁で大阪高裁に差し戻しとなった豊中市の女性(故人)の遺族が継承していた水俣病裁判で、熊本県は訴訟を断念し、女性を水俣病と認定することを発表。(5月2日)

日本弁護士連合会緊急提言(6月27日)
日弁連は、環境省に対し、水俣病の現行の認定基準である「昭和52年判断条件」を改定して、恒久的な患者救済システムを構築するよう再三にわたって提言してきましたが、前記最高裁判決により司法判断が確定したことから、改めて下記のとおり水俣病問題の総合解決に関する緊急提言をとりまとめ、2013年6月 27日付けで、環境大臣、熊本県、鹿児島県、新潟県に提出しました。
本提言の趣旨より一部抜粋> 昭和52年判断条件を改定し、現行の症候の組合せを要求する基準を撤廃して、感覚障害のみの一症候であっても、患者の居住歴や魚介類の摂取状況、家族の認定の有無等総合的に考慮して水俣病と認定するという基準に改めること。


日本精神神経学会 水俣病認定に関する最高裁判所判決(2013年4月16日)に関する声明(7月27日)
今回の判決においては、「所轄行政庁の運用の指針としての昭和52年判断条件に定める症候の組み合わせが認められない四肢末端優位の感覚障害のみの水俣病が存在しないという科学的な実証はないところ」と述べられ、本学会の1998年見解が採用された。
本学会は、環境省が今回の最高裁判決を遵守し、昭和52年判断条件を撤回することをあらためて要請する。


九州弁護士会連絡会 水俣病問題につき,認定基準を改め,すべての被害者を水俣病患者と認めて救済することを求める決議(10.25)
国に対して,(1)昭和52年判断条件を改定し,現行の症候の組合せを要求する基準を撤廃して,感覚障害のみの一症候であっても,居住歴や魚介類の摂食状況などといった諸条件を踏まえて,総合的に考慮して水俣病と認定するという基準に改めること。


公害健康被害補償不服審査会が、下田さんを認定相当と裁決。(10月25日)
熊本県知事が下田さんを認定。(11月1日)


欧州環境庁
『2013年版報告書』5章に、水俣病についての記述があり、国が定めた52年判断条件について「根拠がない」と指摘する論文が掲載されている。(2013年1月発行)

「俺様ルール」で都合の悪い判決・裁決を曲解し、正当化し、強行突破するのは許されない。
もはや、環境省に逃げ道なし。八方ふさがりの状態だ。(続く)

posted by みの at 10:00 | TrackBack(0) | 水俣 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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