2009年07月05日

国に「なさけ」があるのなら 石牟礼道子さんから

6月29日の水俣病特措法案に反対する記者会見で、作家の石牟礼道子(いしむれい・みちこ)さんから寄せられたメッセージが紹介されました。


石牟礼さんは「苦海浄土」(くがいじょうど)という小説で、水俣病患者の心の叫びを描いた作家です。今日まで、本作品は多くの人に読まれ、水俣病患者の伝えられていない内心を、文字で、驚くほどに表現されています。


私はあまり小説(フィクション)は読まないのですが、石牟礼さんの「苦海浄土」を読んで、

こんな文学の世界があるのか

とか

文字による表現は、こんなにすごいのか

と、魂を揺さぶらされてしまうほど衝撃を受けました。


その石牟礼さんが、29日の記者会見に参加はできないけれど、一緒に同行している心境で、とメッセージを寄せてくださったのが、以下に転載するものです。

 この度、私共は東京に、日本という国を探しに参りました。
 と申しますのは患者の中に、「東京にまで行ってみたばってん、日本という国は見つからんじゃった。」
とおっしゃる方々が沢山いらっしゃるからでございます。これは我が民族におって由々しきことではないでしょうか。考えてみれば、日本という国が無いとしても、人の世があり、そこには人の情けというものがあって、私どもも何とか生き延びることが出来たと思っています。

 その「なさけ」を求めて、探しに来たのは議員の方々が人に選ばれた方々であるからでございます。お願いですが、日本という国の情けが何処にあるのかお教え頂きとうございます。私共、水俣の者達は、人類が体験したこともない重金属中毒事件に50有余年も捉われ続けております。この年月は親子、祖父母、三代にも四代にも亘っています。有機水銀を脳や身体に取り込んだ人間の一生を考えてもみてください。

 言葉もろくに話せず、箸や茶碗を抱えるのも困難で、歩くことも普通に出来ません。女性の場合には下の始末も自分では出来ません。これはあんまりでございます。議員の方々には人類史上初めてと言われる長い長い毒死の日々を生きている人々の日常をご推察頂けるのではないでしょうか。

 不知火海の汚染は世間が考えるよりは凄まじく、私共発病者を初め、対岸の小さな離党の数々、鹿児島県の島々に患者が続発し、今や万をはるかに超えました。人間や魚の発病だけでなく、海底の食用植物の危険度についても国や県は調査しておらず、一人の人間の胎児の時代から少年、青年、壮年、老年の経過については、一部の研究者はおられませうが、国民は病状の実態について知らされておりません。これからも患者の発生が続くと思われます。

 明治41年に始まったチッソは高度成長期を頂点にして世界史的な発展を遂げ、国策に寄与してきました。それに対して水俣病の発生は一種の凶兆でした。何しろ昭和7年から36年もの間、有毒汚泥を不知火海に朝も昼も晩も流しつづけたのですから。長い間には裁判を起こした患者もいて、2004年には最高裁で熊本県と国にも責任があるという判決が下されました。県と国は判決を殆ど無視して今日に到っております。それがあらぬかこの度国会に提出される特措法案では未認定患者を表向きは救済すると乍(なが)らチッソの分社化と地域指定解除を謡いあげております。

 こんな残酷な毒物を背負ったまま患者達は認定、未認定に関わらずあの世へ行かなければなりません。よくもこんな残酷な法案を作ったものです。この様な法案を作って世界に示す民族性を私共は国辱と思います。水俣病に本質的な救済というものはありえません。何故なら一度身体に入った有機水銀は出ていかないからです。せめて生き残った者が、この「人柱」たちを少しでも楽になれるようにさせて頂くというお気持ちになってくださらないでしょうか。

 水俣病は治療法が無く、不治の病となっています。日夜苦悩している患者達を救済するどころか、審査会にかけて棄却する方向に持っていきつつある様に思います。処理しきれぬ程に増えた患者数に驚き、なるべくなら早く死んでほしいと思って、長引かせているやに思われてなりません。

 せめて国が、できることは、日々の生活の足しになるような慰謝料を差し上げることか、治療法に取り組む医者を育てるとか、棄却などという冷酷な言葉で処理しないように、国力を挙げてお取り組み頂きたいと思います。多くの人が選んだ議員様方にぜひともご協力頂きたいと存じます。


 今日は私共のために、貴重な時間を割いて下さり本当に有難く存じました。祈念を込めてお願い申し上げます。

2009年6月3日
石牟礼道子


ishimure.JPG 
ishimure2.JPG


写真家・宮本成美さんは、1970年5月25日、厚生省前での水俣病患者支援者らが行った座り込み抗議活動の写真を撮影。
その写真には、若かりし頃の石牟礼道子さんの姿があります。

水俣病患者の写真がかかげられたプラカードを持ち、まっすぐに正面を見据えた視線。

その小柄の女性が、石牟礼さんだと知った時、私はその写真の前から動けななくなりました。(嘘じゃなくて、本当に)

ああ、あの作家の石牟礼さんは、小説を書いているだけでなく、
行動する作家なんだ!と。

きっと私は、その人の職業が何であれ、
一人の人間として社会と向き合ったときに、行動できる人が好きなんだと思います。たとえ、その行動がリスクをともなうことであっても。(命は粗末にしちゃダメですけど)

国会議員の皆様。
日本という国の情けが何処にあるのかお教えてください!


国の政治に「なさけ」があるのなら、
今回のような法案は出てこないはず…

やっぱり今回の水俣病に関する特措法案、おかしよね!
特措法に賛成している自民党、公明党、民主党は考えなおしてほしい!
と思われましたら、
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posted by みの at 10:48 | TrackBack(0) | 水俣 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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